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籠の中の天使
第20章 愛の差



ノアと2人で南斗の部屋の前まで来た。

なのに、その部屋の扉を開けるのが怖くて動けない。


「ほら、咲都子はもう自分で翔べるだろ?」


口を尖らせるノアが私の背中を押す。


「だって...。」


今更、南斗に会わせる顔なんか無い。

ゴニョニョとノアに言い訳をしてると、私の意思に反した扉がいきなり開く。


「咲都子っ!」


南斗の声がする。

前よりも痩せた南斗の顔に驚く事しか出来ない。


「南斗さんの天使を返すよ。」


ノアはそれだけを言うと私と南斗から背を向ける。


「ノアっ!」


ありがとう…の言葉が出て来ない。

さよなら…だけは絶対に言いたくない。

ノアは背を向けたまま


「またな…。」


とだけ呟き立ち去った。


「咲都子…、寒いから中に入れ…。」


ノアの背中を見送り続ける私を南斗が部屋へ入れる。

南斗の顔がまともに見れなくて俯くだけの私になる。

南斗の前だと惨めな籠娘のまま動けなくなってしまう。


「ごめ…ん…。」


なさい…。

今更の言葉を素直に言えない。

なのに南斗は


「おかえり…。」


そう言って何事も無かったように私の額に口付けする。


「南斗…。」

「咲都子はノア君が好きか?」

「わからない…、だってノアはカッコよくて、優しくて…、何でも私に与えてくれる人だったもの。」

「そうだな。俺は咲都子に何も与えてやれない。俺が出来るのは咲都子を愛してやるだけだ。」


私を私のベッドに座らせた南斗がノアとは正反対の事を言う。


「だから、彼に咲都子を託した。咲都子が幸せになれるのなら、それでいいと俺は思う。」


私の膝に南斗が頭を乗せて目を閉じる。

あれほどまで大人に見えていた南斗が、今は痩せてて私に甘える小さな子供のように見える。


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