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籠の中の天使
第20章 愛の差
ゆっくりと今までの自分を振り返る。
ノアを愛してるとは言えない。
あれは憧れであり、夢だと思う。
だから優しいノアは私を現実へ帰す時期だと判断した。
もう籠娘じゃなくなった私をノアは必要としない。
南斗に対する気持ちは変わらない。
それは、まだ愛と呼べる代物ではないけど、世界で一番、南斗が好きだと思う気持ちは変わってない。
ほんの少しだけ大人になった私は南斗の髪を撫でて話をする。
「凄く素敵な夢を見たの…、私が天使になって羽ばたける世界を見つける夢だった。」
泣きながら話す私を南斗はゆっくりと見つめる。
ノアの世界に夢を見た私を笑う事無く、南斗は見守ってくれる。
そして…。
「夢を現実にしたいか?」
と南斗が言う。
「無理だよ。」
だって南斗はノアじゃない。
そう考える私の膝から離れた南斗が自分の部屋に行き、封筒を手にして戻って来る。
「咲都子の学校の編入手続きの書類と、ノア君が紹介してくれたプロダクションの契約書だ。」
封筒から書類を出した南斗が私に確認する。
「市原さんが目指して成功した世界は今まで咲都子や俺が居たあの街の世界よりも厳しい世界だと思う。それでも咲都子は、その世界で生きる覚悟はあるか?」
ノアが後の事は南斗に任せたと言っていた。
これが最後のノアの気持ちだ。
私が天使として翔べると信じてくれたノアの気持ちを踏み躙る事だけはしたくない。
「南斗の学校には戻れないの?」
そこだけが気になる。
「無理だ。うちは進学校でアルバイト禁止だぞ。それに咲都子が出た雑誌が発売されれば、嫌でも騒ぎになる。その前に自主退学の手続きをして、芸能専用の学校へ編入する方がいい。」
服飾を扱う専門学校へ行く為に高校だけは卒業しておかなければならないと南斗が言う。