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籠の中の天使
第20章 愛の差
自分を責める事しか出来なかった。
傷付けられる度に、あの街の籠娘だからと諦めて俯く事しかして来なかった。
理不尽に向けられる怒りと向き合って戦う強さを知らなかった。
ノアや千鶴さん、穂奈美さんから戦う強さを持たなければ生き残れない世界があると教わった。
だから沙来さんのように強くなると決めた。
皆んなが憧れた沙来さんのようになれば私は私の未来に向かって翔べるのだと知った。
「私が翔びたい世界では憧れの人をライバルとして蹴落とす強さが必要だって教わったの。」
未来を見つめる私を南斗が引き寄せて抱き締める。
「強くなったのは嬉しいけど…、もう少し、俺の咲都子で居て欲しかった。」
膨れっ面をする南斗が私の手を取り甲にキスをする。
「俺の咲都子って何よ?」
「俺だけの咲都子…、今はノア君に取られた。」
「だって…、だから…ノアって…、カッコいいんだもん。」
「だから、もう俺の咲都子じゃないって意味か?」
「それは…、ちょっと違うかな…。」
「今の咲都子は俺の事が嫌いか?」
ノアに恋心を抱いて浮気をした私を責める目で見る。
「元々は南斗が…キスしてくれないからじゃん…。」
「それでノア君とはキスをしたのか?」
「キスだけじゃないもん。ノアは気持ち良くしてくれたもん。」
開き直るしかない。
事実として、ノアの愛撫に溺れた。
女として男を求めてしまう自分を知った。
そこに愛はなくとも、それを求めてしまう本能を感じた。
「ノアとはあの街で行われるSEXと同じ事をしただけだと思う。」
私に全てを与える代償として、ノアは私の身体を弄んだ。
あの街で働くと決めた私に、あの街で働く本当の意味をノアは教えてくれただけだ。
結局、最後までノアは私を抱こうとはしなかった。
そこに愛が無い事がノアは許せなかったのだと思う。