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籠の中の天使
第3章 学校嫌い
こんな私に明るい未来なんか訪れるはずが無い。
時間が止まった街で時間を止めたように耳を塞ぎ踞るのが私の毎日の日課みたいなものだった。
気付けば朝…。
5時半…。
自分の部屋から出れば、お父さんとお母さんがまだ寝てる。
両親の寝室をすり抜けて台所に向かえば、夕べのお惣菜が片付けられてる代わりにビールの空き缶が転がってる。
その空き缶の横には一万円が置いてある。
私の生活費…。
その一万円を無造作にポケットに入れて台所の流しで顔を洗い歯を磨く。
逃げたい!逃げたい!逃げたいっ!
そんな気持ちしか湧かないから、さっさと制服に着替えて家から飛び出す。
ユーロビートが聞こえず静かになった街は人が一人も歩いておらず無人の街のようにも見える。
そんな街から逃げるように駆け出して近くにある商店街まで走り抜ければ商店街の向こう側に高架になる線路が見える。
あの電車に乗れば、この街から出られる。
ギュッと自分の右手で左腕を抱き締めて心のザワつきを治める。
まだ始発が始まったばかりの駅…。
それでも何人かの人が居る。
欠伸をしてるサラリーマンやぐったりとしてる女の人…。
社会人の中で高校生は私だけ…。
ホームに滑り込んで来る電車にはほとんど人が乗ってないから席もガラガラに空いてる。
その席の片隅に怯えたように座る。
「あっ…、おはよー。」
「眠ーい…。」
「早朝出勤とか辛いねー。」
かなりお洒落な女の人が2人で話をしてる。
意外と声が大きくて車内は彼女達の会話が蔓延する。
「最近、フロアマネージャーがウザくない?」
「わかるわかる。売り上げ売り上げって…、煩く言うなら自分が売ってみろって言ってやりたい。」
彼女達の会話から有名な百貨店の名前まで出て来る。