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籠の中の天使
第22章 攻撃
後3日で私がモデルとして仕事をした初めての雑誌が発売される。
私の価値はそこで決まる。
誰も見向きもしない程度のモデルだった場合、プロダクションは私の我儘を聞く価値がないと社長は言ってる。
千鶴さんも穂奈美さんもこの世界は厳しい世界だと教えてくれた。
ヌクヌクと甘えて居ても私の時間は止まったままだ。
「なら、条件は抜きで契約は出来ますか?」
北斗さんが口を開く前に私の方が口火を切る。
「咲都子ちゃんっ!」
慌てる北斗さんが私の腕を掴む。
「北斗さん、大丈夫だよ。この業界はそんなに甘くないって教えてくれた人が居るの。だから、どんな条件になっても私はチャンスが欲しいと思う。」
私が北斗さんを説得する姿を社長はじっと見続ける。
「それでは…、satoさんはどんな条件だったとしても、うちの商品になる覚悟があると?」
社長の質問に少し笑ってしまう。
だって、私はあの街の子…。
「私が生まれた街では女性の身体は商品であり売り物という扱いを受けています。だからといって自分の誇りまで捨てている女性は1人もいません。私は私が欲しい未来の為に商品になる覚悟を決めたつもりです。それがどんな条件であっても、私が進みたい未来への道となるなら受け入れます。」
あの街は特別な街じゃない。
何処に行こうと、あの街と同じ扱いを受ける覚悟と強さがなければあの街を出る意味が無いと思う。
強く唇を噛み締めて答える私をノアのお父さんが笑い出す。
「これは…、随分と失礼な事をしたようだ。先程の態度は改めて謝罪をさせて頂きたい。」
しっかりと頭を下げる老人に私と北斗さんは狼狽える。
「あの…。」
「試すような真似をして申し訳ありませんでした。契約は最初の条件のままで進めたいと思います。」
社長の言葉に北斗さんが脱力したように椅子へとへたり込む。