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籠の中の天使
第22章 攻撃
でも違った。
ノアのお父さんはノアのように大きな手で私の頭を撫でて来る。
「咲都子さんには感謝してる。」
お父さんの言葉に驚いて目を見開く。
「感謝ですか?」
「あの子の時間はずっと止まったままだった。それが咲都子さんと出会い、少しづつ動き出した。」
お父さんの瞳の炎が優しく揺れる。
「あの子は何でも出来る子だった。親馬鹿かもしれないが普通の子よりも努力して器用に何でもやり遂げる子でした。」
初めてのノアの仕事は女優であるお母さんの関係者に依頼された紙オムツのCMだった。
赤ちゃんを使うCMは赤ちゃんを何人も集めて撮影するのが当たり前らしい。
大人の都合は関係なく、泣いたり寝てしまったりする赤ちゃんを何人も色々な形で撮影して使えるカットだけをCMとして作り上げるのが普通なのにノアは撮影中、ずっとご機嫌で笑顔を絶やす事がなかったとお父さんが教えてくれる。
「そこからは子供服のモデルをしながら劇団に入り、子役としてテレビにも多少は出るようになってね。」
ノアは努力をする人だ。
誰よりも光を放つ子役になろうと頑張った。
「それを周囲は認めなかった。母親が女優だから、父親が有名人だから…。そんな風にしかあの子の努力は認めて貰えなかった。」
ノアが自暴自棄になるのに決定的になった事件はドラマのオーディションの事だった。
「幾ら演技力があったとしても日本人夫婦の子供に赤毛の子が使って貰えるはずがない。全てのドラマでレイヤは拒否される子役になってしまった。」
そして日本を出る決意をした。
様々な人種が存在するアメリカなら赤毛だからとは言われない。
そう思っていたノアの前に、新たに努力したアメフトでの人種差別が立ち塞がる。