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籠の中の天使
第22章 攻撃



大学は高校よりも広い。

正門から大きな道が様々な校舎へと伸びている。


「凄ーぃ。」


南斗が行かせたがった大学に初めて足を踏み入れる。

学生は誰もが楽しげに笑ってて、こんな風に私が笑える場所を南斗が与えたかった気持ちがよくわかる。


「今は南斗よりもノアだ。」


独り言を口にしないと広い大学に飲み込まれそうな気がして立ち止まってしまう。

お父さんが言っていた経済学部の方向を立て看板の地図で確認をしながら突き進む。

時々、私の方を振り返る人が居て、段々と怖くなる。

関係者以外は立ち入り禁止だから?

早くノアを探さなければと気が焦る。


「いいじゃん、玲夜も来いよ。」

「お断りします。」

「玲夜が来たら女子が増えるんだよ。」

「先輩、俺…もうアメフト部じゃないから…。」


そんな会話が聞こえる。

お腹まで響く声の方へと振り返る。

木の下にあるベンチに座ってる赤毛の男の人とその前に立つ大きな男の人が居る。

ベンチに座る赤毛はずっと携帯を弄ったままで私になんか気付きもしない。


「ノアッ!」


声を上げる。

ゆっくりと赤毛が顔を上げる。


「咲都子?」


慌ててベンチから立ち上がったノアが私に向かって突進する。


「玲夜、彼女?可愛いーっ!」


ノアと居た人がそんな奇声を上げたから、周囲に居た学生が私とノアをガン見する。


「先輩、悪い。俺、今日は人と約束がある。」

「何?彼女とデート?」

「親父とだよ。」


私を隠すように肩を抱いたノアは正門へと歩き出す。


「契約じゃなかったのか?」


心配そうな紅い炎が私の方を覗き込む。


「契約…した。だからご飯を食べに行こうってお父さんから言われたの。」


ノアの傍に居るとドキドキする。

それは南斗に感じるドキドキとはやっぱり違う。


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