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籠の中の天使
第1章 籠娘…、籠娘…



南斗にしか私は頼れない。

他の人は怖いから…。

南斗だけが私に触れられる。

そして私は南斗に触れたいと手を伸ばす。

だけど、世界は無情だ。

ガラッと勢いよく保健室の扉が開き


「モッチー?居るー?」


と不躾な黄色い声がする。

南斗は慌てて私が居るベッドの周りを囲むカーテンを閉じる。

そうやって私はここでも籠娘になる。


「いつも言うけど、ここは保健室だ。病人が寝てるからドアはノックして静かに入って来なさい。」


南斗の柔らかく叱る声がする。


「えー?病人って、どうせ居るのは相原さんでしょ?」

「相原さんって誰だっけ?」

「うちのクラスの相原さん、確か1年の時からずっと保健室にしか登校して来ない子だよ。」

「うちの学校にもそんな子、居たんだ。」


3人くらいの女子の声がする。

私が南斗の保健室に登校して今年で2年目…。

そろそろ私は学校が特別扱いしてる頭のおかしい子だと思われてるらしく、他の学生の言葉に遠慮がない。


「それで、お前らはどう見ても健康にしか見えんが、わざわざ保健室に何しに来た?」


南斗が保健室で騒ぐ彼女達に呆れた声で言う。


「今日の調理実習で…。」

「クッキーを焼いたの。」

「だからモッチーにお裾分けー。」


意味もなくテンションの高い彼女達はキャッキャッとはしゃいで南斗と話す。

南斗は学校では人気がある先生の一人…。

怪我などの治療も丁寧だし、学生の悩み相談とかも引き受けてる。


「ありがとうな。」


南斗がそう言うと


「食べて食べてっ!今回は自信作なんだよ。」


と私同様で南斗に構って欲しい彼女達は一向に保健室から立ち去る気配を見せない。

私は一人でベッドの中へと潜り、この嵐が早く通り過ぎる事だけを強く願う。


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