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籠の中の天使
第23章 戦い
会見の会場へお父さんが姿を現しただけでテレビの画面が真っ白になるほどのフラッシュが焚かれる。
それだけの光を浴びるお父さんの紅い瞳は何かを見据えたように全く揺らぎを見せない。
「本日は当社のこのような緊急の会見の申し出に応じて頂き、マスコミ各社及び関係者各位方々へは…。」
司会を務める男の人の在り来りの挨拶から始まった会見は何処のチャンネルでもライブで放送され、ノアのお父さんの力の凄さに私や南斗は声も出ない。
会見でのマスコミからの質問は禁止…。
そんな言葉だけで会場はザワ付き、フラッシュの光が更に増える。
ノアのお父さんがこの会見で潰されてしまうのではないのかと思うだけで怖くなって耳を塞ごうとしてしまう。
私の手を両サイドに座った南斗とノアが強く握る。
「社長さんは咲都子の為に戦ってくれている。」
と南斗が言い
「親父の言葉、最後まで聞いてやれ。」
とノアが言う。
ゆっくりとノアのお父さんが口を開く瞬間が目に入る。
スローモーションのように、本当にゆっくりとした動きだった。
「マスコミ各位からの質問は最後に受けるつもりです。ですが先ずは私の話を聞いて頂きたい。」
ノアと同じ重みのある言葉が放たれると一瞬だけは会見内がシンと静まる。
それは一瞬であり、再びフラッシュの嵐がお父さんを取り囲む。
フラッシュが途切れるのを待ち、お父さんが口を開く。
「先ずは私の個人的な話をさせて頂く。その昔、私の父は言われなき罪を問われ、迫害を受けて自分が生まれた国をも追われる事となった。その様な状況下にありながらも父の生命だけは、この日本という国のある人物によって救われました。それについては私の生命も救われたのだと非常に感謝をしております。しかしながら父が犯したと言われる罪とは一体何だったのか?私はこの歳になっても未だに考えてしまう。そう、父の罪とはユダヤとして生まれたという事だけだったからです。」
お父さんの熱弁に会場が再び静まり返る。