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籠の中の天使
第23章 戦い
目の前が歪む。
目頭が熱くて堪らない。
涙でお父さんが見えなくなっても必死に画面に映るお父さんの姿を追い求める。
「これが事実の全てです。何度も言うが、彼女は未成年のか弱き少女です。あの街に生まれたというだけの少女です。そんな彼女をこの会見を聞いた皆さんは罪人だと裁くおつもりですか?もしも、この不幸な少女がモデルとして世間から注目を浴びていなくとも、週刊誌はこの記事を載せたのでしょうか?」
お父さんの問いかけに誰も答える事はない。
「この記事に関しては、それだけ彼女が世界から注目を浴びるに相応しい子だったと示してくれたと思い、当社としては嬉しい限りだと言わざるを得ない。」
悪戯っ子のようにお父さんがニヤリと笑う。
「Dad…、調子に乗るなよ。」
ノアがガックリと項垂れる。
「最後になりますが、普段の彼女はまるで子兎のように小さくなり震えてばかりであり、人との関わりに常に怯えているだけの、か弱き少女であります。その彼女が当社との契約の際、この私にこう言いました。『あの街は良い街とは言えない。それでも人としての誇りを持たない者は居ません。』と…。そんな彼女の誇りと輝きを見た時、私には彼女が天使に見えた。もしも、このまま彼女を罪人として迫害を続けるのならば、この国は天使を失うのだと理解をして頂きたく、本会見を開いた所存であります。」
お父さんの言葉が終わった。
なのに会場内は誰も動かない。
「勝ったな。」
ノアがホッとした表情を浮かべる。
「では、質問を…。」
司会者が述べると礼儀正しく男の人が手を上げる。
「少女は今後の活動ですが、あの黒沢 千鶴が専属で付くというのは事実でしょうか?」
先ほどとは違い、私の未来への質問が増える。