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籠の中の天使
第3章 学校嫌い



その通用門から教員専用の駐車場の脇を通り校舎へ向かう。

校舎に入るにも教員専用の出入口を使う。

本当は教員しか使わないロッカーだけども、そこに私の上履きがあるから履き替えて職員室を先ずは目指す。

7時の15分前に事務の先生が来る。

お母さんよりも年配のおばさん…。


「今朝も早いね。」


警備の人と同じ事を言って私に保健室の鍵をくれる。


「ありがとうございます…。」


テンプレ的な挨拶しかしない学生だと思われてる。

対人恐怖症の診断を持つ私に無理に話し掛けようとは誰もしない。

無人の学校を歩き保健室に入る。

ここが私の居場所…。

南斗と居られる場所…。

卒業までの避難場所…。

学校を卒業すれば私の居場所はあの喘ぎ声が響き渡る狭くて暗い物置の様な部屋だけになっちゃうかもしれない。


助けて…。


声にならない悲鳴を上げる。

私の悲鳴は誰にも届かない。

保健室のベッドに倒れ込み、小さく踞り南斗を待つ。


「咲都子…。」


暖かい手が私の頭に触れる。


「南斗…。」


顔を上げれば保健医が優しく笑ってる。


「授業が始まるから…。」


いつの間にか寝てたみたい…。


「トイレ…、行って来る。」


授業開始時間まで10分しかない。

保健室を出た突き当たりに教員専用のトイレがある。

私だけは使用が許されてる。

そのトイレで用を済ませ、手を洗い顔も軽く洗う。

トイレを出ようとした時、女の先生が入って来る。


「相原さん…。」


若い女性…。

その先生が素敵な笑顔で私を見る。


「前に挨拶したけど覚えてない?」


女の先生は少し困った表情をする。


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