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籠の中の天使
第23章 戦い



「ちょっ…南斗っ!」

「悔しいんだよ。俺は咲都子の為に何もしてやれない。俺は咲都子の傍に居るしか出来ない男だから…。」


それはノアへの嫉妬だ。

いや、ノアにだけじゃない。

私の為にと戦ってくれたあの街の人や会見を開いてくれたお父さんなど私の為に動いてくれた全ての人に対する嫉妬だと感じる。

大き過ぎる愛は大き過ぎる嫉妬を生む。


「傍に居てくれるのが南斗で良かった。」

「咲都子…。」

「南斗が居てくれたから私は私で居られる。私は南斗の天使のままで居たい。もう他のものにはなりたくないの…。」


もう二度と籠娘にはなりたくないと願う。

時間を失い、人形のように生きる醜い籠娘にならない為に南斗が傍に居てくれる。

それだけで充分に幸せだと思う。


「キス…して…。」


精一杯の背伸びをして南斗の首に腕を回せば穏やかに笑ってくれる顔が目の前まで寄って来る。

唇が唇に触れた瞬間、玄関の扉がノックされる。


「なっ!?」


南斗が妙な声を出す。

こんな時間にこの部屋に来る人なんか存在しない。


「マスコミか?」


目を細める南斗がピリピリとして警戒する。


「部屋まで押し掛けて来たりするの?」

「咲都子は自分の部屋に行って隠れてろ。万が一の時はノア君に電話しろ。」


緊張しながら自分の部屋へと駆け込む。

そっとドアの隙間から南斗の様子を伺う。

南斗が玄関の扉を開ける。


「兄貴かよっ!」


そんな叫び声がする。

部屋から飛び出して来客の確認をする。


「俺が来たら不味かったのか?」


呑気な北斗さんが南斗の頭をガシガシと撫でて子供扱いしてる。


「何しに来たっ!」


南斗だけが北斗さんに牙を剥く。


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