この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
籠の中の天使
第23章 戦い
お兄ちゃんは余裕の顔をして
「何って、緋彩が作った弁当を届けに来てやったんだよ。後は『たこ八』のおばちゃんからたこ焼きも預かってる。2人共、しばらく出歩けそうにないから食料が欲しいって頼んだのは南斗だろ?」
と弟の手に大きな紙袋を押し付ける。
「それは咲都子のマネージャーさんに頼んだんだよ。」
北斗さんには不貞腐れる南斗が言う。
「そのマネージャーさんから持って行ってくれと連絡が来た。」
「兄貴、どれだけの人と連絡をしてんの?」
「そりゃ、ノア君のお父さんの会見中は持田病院が関係者全ての人からの連絡先って計画だったし…。」
「マジかよ…。」
「万が一の時にマスコミから咲都子ちゃんを隠して、この部屋から移動させるとなれば、この街じゃ持田病院を経由するのが一番安全だからな。」
北斗さんの言葉に少しだけゾッとする。
「万が一って…何?」
恐る恐ると聞いてみる。
「あの会見で、ノア君のお父さんの言葉がマスコミ側へ伝わらなかった場合、お父さんは咲都子ちゃんと南斗をアメリカに連れて行くつもりだったって話は聞いてない?」
「少しだけは聞いたけど…。」
「あの会見の後でもマスコミがまだ俺らの街を攻撃するのを止めなかった場合、一番弱い咲都子ちゃんが真っ先に狙われるとノア君は判断した。」
「ノア…が…?」
「彼、ノア・グループの跡取りだからね。俺ら凡人にはわからない事まで全てを推測して行動が出来るらしい。」
なんとなくわかる気がする。
私達には見えない何かが見える人…。
それは沙来さんやノアとノアのお父さんの様な人達の特権みたいなものだと思う。
いつかは彼らと同じものが見える大人になりたいと憧れを抱く。