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籠の中の天使
第24章 どんな状況でも…
「玲夜君らしくない言葉だとは思ったわよ。でも、私は咲都子ちゃんに期待していたの。咲都子ちゃんなら、どんなモデルよりも私がデザインしてコーディネートした服を可愛く着てくれるって…。」
なのに、私はそんな風に思ってくれていた穂奈美さんを失望させてしまった。
「私の様になりたいとか…、何故、もっと上を目指して翔ぼうとしない子のだろうと思ったわ。」
その程度にしか穂奈美さんの世界を考える事が出来なかった私の為だけで本当に市原 穂奈美の名を汚すリスクを負うべきなのかと穂奈美さんは悩む。
「私達はプロだからね。リスクを犯すべきかの判断は自分の人生の全てを賭ける事になるもの。」
千鶴さんが悩んだ穂奈美さんの気持ちはわかると言う。
「でもさ、やっぱり千鶴さんの言う通り、私もプロなのよ。プロとして常に仕事は最高の物を創り上げたいと思っちゃうのよ。」
編集部で私の写真を見た時、穂奈美さんはこれ以上の写真は無いと確信したらしい。
「だから、その瞬間に決めたの。市原 穂奈美の名がどんなに汚れても私は咲都子ちゃんを信じるって…。その覚悟で雑誌に掲載したのは私なのに、咲都子ちゃんが謝るのはおかしいでしょ?」
少し照れたような表情で笑ってくれる穂奈美さんの言葉が嬉しくて涙が出そうになる。
「悪いけど…、私が咲都子に謝って欲しくない理由は穂奈美とは違うわよ。」
泣きそうになる私の頬を千鶴さんが抓る。
「ひじゅるひゃん…。」
「私はさ…、アンタと同じスラム育ちなの。」
哀しみを含む瞳を閉じた千鶴さんが私の頬から手を放す。
「スラムって何ですか?」
かなり間抜けな質問をした私をフフフと千鶴さんが笑い出す。