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籠の中の天使
第24章 どんな状況でも…



「千鶴さんもノア社長のプロダクションに?」


アメリカ人の千鶴さんだから、ノア社長と何らかの接点があったとしてもおかしくはない。


「私にモデルとか出来ると思ってんの?」


とてもダークなオーラを漂わせる千鶴さんが私を見下ろしながら睨み付ける。

でも、かなり痩せてるとはいえ千鶴さんは凄く背が高くて、それなりに整った顔なのだから不可能だとは思わない。


「あのねー…。」


呆れる千鶴さんが昔の話をしてくれる。


「私をスラムから出してくれたのがノア社長なのよね。」


照れ臭そうに千鶴さんが微笑む。

千鶴さんが13歳の時だった。

ビルの壁にペンキスプレーで落書きをしていた千鶴さんに


『壁ではなく、人の顔に君の作品を描いてみないか?』


と突然、声を掛けたのがノア社長だった。


「私もガキだったのよ。高級ブランドのスーツを着て、コートを羽織った金持ちに私の作品の意味なんか理解が出来るはずがないって思い、ノア社長にスプレー缶を向けて脅したのよ。」

「社長を脅したのですか?」

「銃じゃないだけマシよ。生命までは取らないんだから…。」


千鶴さんがニヤニヤしながら言い訳をする。


『俺が人の顔に落書きなんかしても、腹はいっぱいにならない。アンタのそのご立派なコートに落書きをしたってアンタは俺に金なんかくれないだろ?』


スプレー缶を向けたまま、ノア社長に今すぐに消えろと千鶴さんは威嚇するのに、社長は大きく両手を広げて好きなだけ描けば良いと開き直る。


『君の作品を見せてくれるなら、お腹いっぱいになるまでご飯を食べさせてあげよう。暖かい部屋も用意する。』


そう言って社長は千鶴さんをスラムから連れ出した。


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