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籠の中の天使
第24章 どんな状況でも…
「但し、この仕事の裏には、あの沙来さんの後押しがあったと私は見てる。」
千鶴さんの目が厳しい視線へと変わる。
「沙来さんが…。」
「『Beau』の社長とは沙来さんが長い付き合いだもの。穂奈美の完全復帰と咲都子に定着したイメージに関して払拭出来る仕事をバックアップが出来る人はあの人しか居ないわ。」
沙来さんに守られてる。
あの沙来さんが何処かで見てる仕事だ。
絶対に失敗なんか出来ないと穂奈美さんも千鶴さんもプロの表情へと変わってく。
「そろそろ行くわよ。」
千鶴さんの言葉を合図に穂奈美さんのお店を出た。
「お腹、空いてる?」
車に乗った私に岡田さんが聞いて来る。
「今は…大丈夫。」
頭の中は失敗出来ない仕事の事で埋め尽くされて、食事なんか出来そうに無い。
顔を上げて…。
笑顔だけを貫く。
呪文のように呟いて、俯く事を自分自身に許さない。
車は前よりも大きな撮影スタジオへと入ってく。
「Eスタジオだけど、1人で行ける?私はちょっと関係者に挨拶があるから…。」
「行けます。」
岡田さんが居なくなってもスタジオには千鶴さんも穂奈美さんも居るから大丈夫だと思う。
長い廊下にはスタジオが幾つもある。
迷子になりそうな広いスタジオ内を慎重に歩く。
遅刻なんか出来ない。
壁にある地図を何度も確認しながら目的のスタジオへと向かう。
大きな鉄の扉にEの文字が見えた。
息を吸って扉を開けば、扉の前に居た男の人が
「おはようございます。」
と声を掛けて来る。
以前の私なら、知らない人に挨拶をされただけで俯いて逃げ出していた。
今は、逃げたりなんか出来ない。