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籠の中の天使
第4章 診察



私の前で立ち止まり、そっと私を抱き締める。


「何があった?」


優しく触れる程度の力で私の顔や前髪を撫でて聞いて来る。


「知らない…、男の子が…何処に行くって…。」


変な子に声を掛けられた。

いや、変な子は私かもしれない。

男の子は普通に声を掛けただけなのに…。

自分勝手に感じた恐怖から動揺して怯える変な女の子…。


「そっか…、大丈夫だったか?」


南斗の唇が私のこめかみに触れる。

チュッ…。

そんな小さなリップ音がして、またチュッチュッと何度かリップ音がする。


「南斗…。」


南斗のシャツを握り締めて南斗にしがみつく。

私を抱く手がギュッと力強くなる。

髪を何度も撫でて私の顔中に南斗の唇が触れる。

でもキスはしてくれない。

私が落ち着いたと判断したら南斗がゆっくりと私の身体を離す。


「腹…、減ったな。外へ食いに行くか?」


そう聞いて来る。


「カレーの材料…、買って来たの。後は『たこ八』のおばさんがたこ焼きをくれた。」


外へ行きたくないと意思表示をすれば南斗がうんうんと頷いて私の頬に口付けをする。


「じゃ、ご飯を炊いてカレーを作ろう。」


ゆっくりと私から離れた南斗が私にエプロンを着けてくれる。

最近は一緒に料理する。

簡単なご飯は作れるようになった。

ハンバーグとかちょっと難しい時は南斗がネットで作り方を調べてくれる。

必ず2人で作る。

失敗してもお互いが文句を言わない暗黙の了解の中で料理する。


「咲都子の切ったじゃがいも…、小さ過ぎる。」

「だって大きいの嫌いだもん。」

「小さいとすぐに崩れて溶ける。」

「その方が美味しいよ。」


たかがカレーなのにお互いの好みを言い合って作る。


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