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籠の中の天使
第5章 間違ってもいい…
10分ほどで病院から出て来た北斗さんは手に往診用の鞄と紙袋を持ってる。
「これは咲都子ちゃんの分ね。」
紙袋を渡された。
中は緋彩さんが作ったお弁当と南斗が好きなアイスクリーム、それにお菓子やジュースが入ってる。
「送るのは、咲都子ちゃんの家?それとも南斗のマンション?」
「週末だから…、南斗のマンション…。」
北斗さんは黙って私を送ってくれる。
ずっと黙ってたのに南斗のマンションの前で車を降りようとした私に
「あのさ、大人として医者としては間違ってるかもしれない。でも俺は兄貴として南斗はもう少し間違いをやってもいいと思ってる。俺は緋彩に出会って自分の学生時代を後悔した。咲都子ちゃんには後悔とかして欲しくないと思う。若さで自分を見失えとは言わないけど若さでしか出来ない事はたくさんある。」
と北斗さんが必死に言う。
間違いって何?
若さでしか出来ない事って何?
北斗さんの言葉の意味がわからない。
「俺の弟は男のくせに意気地無しだ。」
豪快に笑って北斗さんが車を出した。
南斗の部屋で私は南斗の帰りを待つ。
今夜は緋彩さんのお弁当とは別に生姜焼きを作った。
緋彩さんのお弁当はとても可愛くて綺麗なお弁当だったけど、コロッケと卵焼きとプチトマトとアスパラガスのバター炒めじゃ、南斗のお腹は膨れない。
「腹減ったぁ…。」
生姜焼きの匂いを嗅ぎながら南斗が帰って来る。
「ご飯…、出来てるよ。」
「食う食うっ!」
今日の南斗は機嫌がいい。
きっと私が教室に行けた事で学校から煩く言われなくなったからだと想像する。
部屋着のTシャツとスウェットのパンツに着替えた南斗が緋彩さんのお弁当の卵焼きを摘み食いする。