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籠の中の天使
第1章 籠娘…、籠娘…



「ダメだ。もしも部活で怪我をした子が来れば、お前らは迷惑にしかならない。」


南斗は保健医として彼女達を叱る。


「あのさ…。」


彼女達の一人がそう言って南斗の言葉を遮る。


「どうした?」

「相原さん…、聞こえてる?教室においでよ。私達…、相原さんと仲良くしたいと思ってる。」


どうやら私に向かって言ってるらしい。

だけど私は返事をしない。

この学校じゃ、私や南斗があの街の子だと知る子が居ない。

それでも私は籠娘のまま、外へは出たくないと口を閉ざす。


「杉山(すぎやま)の気持ちは相原に伝えとくよ。」


答えない私の為に南斗が答えてから彼女達を保健室から出るようにと保健室の扉を開ける。


「モッチー、またねー。」


パタパタと廊下を軽やかに走る音が響く。

やっと嵐が過ぎたと安堵する。

カーテンが開き、南斗が泣きべそをかく私を見下ろす。


「教室へは…、まだ行けないか?」


南斗の手がそっと私の頭に触れる。

その手がゆっくりと私の顔を撫でるように降りて来て、私が流す涙を指先で拭ってくれる。

そして南斗はわざとらしいほど、ゆっくりとベッドへ腰を下ろす。

ギシリと古い鉄で出来たベッドの軋む音がすれば私の怯えた身体がビクリと嫌でも反応する。


「大丈夫…、大丈夫だよ。」


私の頭を抱えるようにして南斗が抱き締めてくれる。

南斗の心臓の音が聞こえる。

トクントクンと規則正しく鼓動する音と南斗の温もりに私の怯えた心が少しづつ穏やかなものへ変わってく。

こんな風にビクビクと怯える私が教室になんかに行けない。

その理由を嫌という程、知ってる南斗は私を責める事なく落ち着かせようと必死になる。


「でもな…、咲都子…。あの街から出たいなら、いつかは決心して自分の力で飛べるようにならなきゃいけないんだ。」


切なくて悲しい南斗の声がする。


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