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籠の中の天使
第6章 狡い街
南斗と居られるのは保健室と帰りの車の中だけ…。
テストが終わればテスト休みがあって、その後は修学旅行…。
テスト休みは南斗と買い物に行く約束だけど、南斗は修学旅行の打ち合わせで学校に出勤日があると言ってた。
このテスト休みで南斗の気持ちを確かめたい。
だから今はいい子のフリをして南斗と穏やかな時間を過ごす。
「ちゃんと勉強しろよ。」
あの街の裏通りに南斗が車を停める。
「ねえ、南斗…。」
「お?」
「明日、何が食べたい?」
「明日?」
「テストが終わったら南斗の家でご飯作って待ってる。」
「何でもいいや。」
素っ気ない態度に胸が締め付けられる。
「そんな事より、しっかり勉強しろよ。」
私を追い払うように車から降ろすと南斗は私の前から居なくなる。
私がまだ学生だから…。
早く大人になれば南斗と一緒に居られる?
でも大人になる方法がわからない。
私が一人で生きていける大人になるまで南斗が傍に居てくれる約束だったけど、私が大人になれば南斗は私から離れてしまう。
早く大人になりたいのに、いつまでも大人になれない私は矛盾する答えの中で迷子になって彷徨う。
テストが終われば誰よりも早く教室を出た。
「相原…。」
峯岸君が私を呼ぶ声を無視して保健室に行く。
「どした?」
白衣姿の南斗が今日はちゃんと私の方を見て話してくれる。
「テスト…ちゃんと出来た。」
「そっか…。」
「だから少しだけ…、南斗の顔が見たかったの…。」
私の言葉に南斗の顔が赤く染まる。
まだ南斗は私の事を想ってくれてる?
「ねえ、南斗…、私はずっと南斗の傍に居られる?」
南斗が一緒に居てくれるなら…。
私はあの街の籠娘になろうと思う。