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籠の中の天使
第6章 狡い街



「いつか…。」


南斗が俯く。


「咲都子はあの街から翔び立つ。咲都子は天使で自分で翔べる羽根を持ってる子だから…。」


それが南斗の答え…。


「私は天使じゃない。」

「咲都子…、自分の未来を諦めるな。」

「諦めてるのは南斗じゃんっ!」


悔しくて保健室から飛び出してた。

飛び出したところで行く場所なんか無い私に気付く。

一日中、喘ぎ声が響く部屋には帰りたくない。

なのに私が辿り着く駅はあの街の駅…。

あの街しか知らない子はあの街に帰るしかない。

哀しみを引き摺りながらあの街の片隅にある病院に行く。


「あら、咲都子ちゃん、今日は診察あった?」


受け付けの看護婦さんが聞いて来る。


「北斗先生は忙しいですか?」

「うん、北斗先生は忙しいけど、ご高齢の持田先生なら暇よ。」


そう言って看護婦さんがクスクスと笑うと診察室と繋がるカーテンの向こう側から南斗のお父さんが顔を出して


「ご高齢とか言うな…。まだまだ北斗に病院は譲らん。」


と口を尖らせる。

最近の持田病院では若先生である北斗さんの方が人気で予約も北斗さんの方が多いらしい。


「持田先生、お久しぶりです。」


南斗のお父さんに頭を下げる。


「咲都子ちゃん、いらっしゃい。談話室に行こう。オヤツとジュースがあるよ。」


持田先生が私を談話室へ連れて行き、差し入れで貰ったオヤツを出してから自動販売機のジュースを買ってくれる。


「南斗は元気かな?」


紙コップのジュースを私の前に置く持田先生がお医者さんからお父さんの顔になる。


「修学旅行の前だから…、仕事が忙しいみたいです。」

「それで咲都子ちゃんがここに来たの?」


持田先生は北斗さんと同じ表情をする。


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