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籠の中の天使
第6章 狡い街



南斗も北斗さんも持田先生も、すぐに親兄弟ってわかるほどそっくりだから、同じ目で見つめられると全部見透かされてる気がして落ち着かなくなる。


「私だけ…行くところが無くて…、私だけ未来が見えないから南斗と上手く話せない。」


目頭が熱くなって涙が出そうになる。


「行くところが無ければ、ここに来ればいい。未来なんか誰にも見えないのだから気にする必要なんか無い。」


持田先生が私の頭を優しく撫でてくれる。


「でも…。」

「大丈夫…、咲都子ちゃんは嫌いかもしれないが、本当のこの街は行き場を失くした人が来る最後の楽園なんだよ。」

「楽園ですか?」

「そう、この話は小さな北斗や南斗にもしてやった。あいつらもこの街が嫌いだとよく言ってたからな。」

「南斗も…。」

「でも、この街が無ければ地獄のまま終わる人も居る。そういう人の最後の居場所がこの街であり、人には絶対に必要な場所だと僕は思ってる。」


だから私のお父さんや持田先生はこの街を守ろうとしてしまう。

生活が出来なくて生きるためにこの街に来て仕事をする女と自分に自信が持てなくて捌け口を求める男が出会う街…。

性と快楽は人間の本能であり、それを失くせば人は滅びる。

売り物の擬似的な性と快楽であっても人が本能のままに生きられる街はここにしか無い。


「この街は愛もある。ちゃんと法律上は自由恋愛という事で犯罪の街としては扱われてないのが証拠だ。」


とぼけておどけたように持田先生が言う。


「なんか…、狡い街みたい…。」

「そう、この街は狡い街だ。だから傷付けられた咲都子ちゃんを誰も救えなかった。楽園だと言いつつ楽園に生まれた天使を誰も救ってやれなかった。もし天使に見捨てられたとしても誰も天使を責めたりはしない。南斗や咲都子ちゃんは自由に生きる権利がある。」


タバコに火を点けて、ゆっくりとため息を吐くように煙を吐き出した持田先生が疲れた顔をしてる気がした。


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