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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
まだ得意先の敷地内、かつエントランスのすぐ前だ。
無視するわけにはいかず、振り返った。
背中の真ん中くらいまであった栗色のロングヘアは、肩までカットされて内巻きにパーマがかけられていた。
およそ三ヶ月ぶりにしっかり顔を見る。
「何?佐々井さん」
「やだ、つれなーい。絢芽って呼んでくれないのね。さっきすぐに私だって気づいて、動揺したくせに」
下の名前で呼ぶわけがない。
一応仕事中だし、相手は元彼女だ。
厄介なのが得意先に転職していたということなのだが、全くの偶然である。
さっき思わず膝をぶつけてしまったのは、まさかこんなところで遇うなんて思ってもいなかったからだ。よく聞く台詞かもしれないが。
それ故に偶然というのは恐ろしい。
「ま、別に用事はないのよ」
それなら仕事に戻ればいいのに。
下手に口には出せないので、頭の中で思うだけだが。
「ふーん……」
しげしげと上から下まで絢芽――もとい、佐々井さんの視線が移動する。
「櫂のスーツ姿、やっぱり良いわね」
無視するわけにはいかず、振り返った。
背中の真ん中くらいまであった栗色のロングヘアは、肩までカットされて内巻きにパーマがかけられていた。
およそ三ヶ月ぶりにしっかり顔を見る。
「何?佐々井さん」
「やだ、つれなーい。絢芽って呼んでくれないのね。さっきすぐに私だって気づいて、動揺したくせに」
下の名前で呼ぶわけがない。
一応仕事中だし、相手は元彼女だ。
厄介なのが得意先に転職していたということなのだが、全くの偶然である。
さっき思わず膝をぶつけてしまったのは、まさかこんなところで遇うなんて思ってもいなかったからだ。よく聞く台詞かもしれないが。
それ故に偶然というのは恐ろしい。
「ま、別に用事はないのよ」
それなら仕事に戻ればいいのに。
下手に口には出せないので、頭の中で思うだけだが。
「ふーん……」
しげしげと上から下まで絢芽――もとい、佐々井さんの視線が移動する。
「櫂のスーツ姿、やっぱり良いわね」