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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
――よく覚えてるな。
黙って頷いて、肯定の意を示した。
「お前の趣味、何となく分かった。美人だけど、典型的美人じゃなくて綺麗な子」
「別に、顔で選んだわけじゃ……」
言いながら、絢芽の顔を思い返す。
そりゃ、綺麗な子だなと思って最初は惹かれはしたけど。
奥二重で少し切れ長な目元。少し底が見えない感じを一見抱くのに、無邪気に人の名前を呼ぶ。
浮気されたのは俺が忙しさにかまけて放っておいたせいだ。
「ま、過去は過去か。今お前が付き合ってんのは木山さんなんだから」
“ちゃんと大事にしろよ”と言外に含めて、コーヒーを傾けると、キーボードを叩く速度が上げられた。
「よし、報告書終わり。終わってるんなら提出して帰るぞ」
「はい」
腕時計をちらりと確認すると、19時を回るところだった。
いつもよりは少し早い、か。
PCの電源を落とすと、先を歩く田嶋先輩を慌てて追いかけた。
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