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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
帰宅ラッシュのピークは過ぎてはいるが、まだまだ駅にはたくさんの人がいた。
「うーわ、混んでるな」
「そうですね……」
一本遅らせようかと辺りを見渡しながら答えると、
「櫂?」
後方から名前を呼ぶ声がした。
声は聞こえたものの、姿が見えない。
さ迷わせていた視線を目の前に戻すと、当たり前だが田嶋先輩と目があった。
「何で俺を見るんだよ。言っとくけど俺じゃないから」
「分かってるんですけど……すみません」
少ししてから、「すみません、失礼します。通りまーす、すみません」と人波の間から声が聞こえて、ジャケットの裾をくい、と引っ張られた。
「詩乃」
「やっぱり櫂だった。お疲れさま。……あ、こんばんは」
俺の前に居た先輩に気がついて、軽く会釈をしている。
「こんばんは。今帰りなの?」
「はい、今日はちょっと忙しかったので……。この前はありがとうございました」
「いえいえ。俺の勝手なお節介ですから」
にっこりと笑顔を向けた表情のまま、先輩の視線が俺に向けられた。
柴崎、紹介してくれないの?と目が訴えている。
「うーわ、混んでるな」
「そうですね……」
一本遅らせようかと辺りを見渡しながら答えると、
「櫂?」
後方から名前を呼ぶ声がした。
声は聞こえたものの、姿が見えない。
さ迷わせていた視線を目の前に戻すと、当たり前だが田嶋先輩と目があった。
「何で俺を見るんだよ。言っとくけど俺じゃないから」
「分かってるんですけど……すみません」
少ししてから、「すみません、失礼します。通りまーす、すみません」と人波の間から声が聞こえて、ジャケットの裾をくい、と引っ張られた。
「詩乃」
「やっぱり櫂だった。お疲れさま。……あ、こんばんは」
俺の前に居た先輩に気がついて、軽く会釈をしている。
「こんばんは。今帰りなの?」
「はい、今日はちょっと忙しかったので……。この前はありがとうございました」
「いえいえ。俺の勝手なお節介ですから」
にっこりと笑顔を向けた表情のまま、先輩の視線が俺に向けられた。
柴崎、紹介してくれないの?と目が訴えている。