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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
タタン、タタンと電車の規則的な揺れが、疲れた身体に心地いい。
吊り革に掴まってはいるものの、目を開けているのが何となく辛く感じる。
しばしの間、瞼を閉じたのちに再び開くと、向かいの空いた座席に座っていた詩乃がじっと俺の顔を見上げていた。
「座る?代わるよ?」
口の脇に手を立てて、口パクで声をかけられた。
あと数駅で到着する。
気遣いだけで十分温かい。
「大丈夫」
微笑んで見せると、同じように口パクで返した。


降車駅に到着して改札を抜けると、並んで歩き始める。
しばらくして詩乃が口を開いた。
「櫂」
「うん?」
「メッセージしたのと被っちゃうけど、昨日、ごめんね」
「あー……ううん、全然。それより俺の方こそ返信遅れたし」
詩乃はふるふると顔を左右に振ると、「自分で声聞きたくなったくせに、聞いた途端に安心しちゃって」と、ぺろりと舌を出した。
いや、俺としてはあれはあれで良かったと言うか、すごくキた。可愛すぎるんだもん。
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