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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
「お疲れさま。……合ってる?」
「うん、ありがとう」
声が掠れてくぐもってしまったのは、肩に顔を埋めたせいだ。
さっき少しだけちらついた絢芽の残像を消したかったのと、素直に詩乃に触れたくなった。
身体的な疲れはさほど感じていない。今日に限り、精神的な疲れが大半を占めている。
周りの喧騒から遮断されること数分、温もりがすっかり身体に移る頃、詩乃がぽつりと言った。
「充電、できた?」
「え?うん……」
「あのね」
小さな声で呼びかけられたかと思うと、今度はゆっくりと囁かれた。

「家、来ない?」

このモーションには正直、期待しかないのだが、残念ながらエチケットの小袋がない。
でも触れたい。詩乃の手を取って、なぞり上げるように撫でた。
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