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きっかけは十人十色
第25章 嵐の到来
一瞬だけ驚きはしたが、受話器にかからないように口元からずらして息を吐き出した。
「いえ、先ほどお電話頂いた折り返しの連絡なので、また改めます」
『かしこまりました……って、櫂?』
「はい」
同じフロアには、他のたくさんの人が仕事をしている。だからというわけではないが、いつもお客様と話すのと同じように答えた。
『内線で“樋渡商事さんから部長あてに”って受けたから、誰からか分からなかったのよ』
どうやら向こうは一人でいるらしい。
「そうでしたか。電話があったことだけ伝えて頂けると助かります」
『あ、仕事のスタンス崩さないのね』
当たり前だ。
少し沈黙が流れたあとで、短く息を吸う音が聞こえた。
『失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか』
「樋渡商事の柴崎と申します」
『かしこまりました。佐々井が承りました。平田に申し伝えます』
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
『はい、失礼致します』
そこで通話は切れた。さすがに名前の復唱はしなかったようだ。言われても妙な感じしか受けないが。
「いえ、先ほどお電話頂いた折り返しの連絡なので、また改めます」
『かしこまりました……って、櫂?』
「はい」
同じフロアには、他のたくさんの人が仕事をしている。だからというわけではないが、いつもお客様と話すのと同じように答えた。
『内線で“樋渡商事さんから部長あてに”って受けたから、誰からか分からなかったのよ』
どうやら向こうは一人でいるらしい。
「そうでしたか。電話があったことだけ伝えて頂けると助かります」
『あ、仕事のスタンス崩さないのね』
当たり前だ。
少し沈黙が流れたあとで、短く息を吸う音が聞こえた。
『失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか』
「樋渡商事の柴崎と申します」
『かしこまりました。佐々井が承りました。平田に申し伝えます』
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
『はい、失礼致します』
そこで通話は切れた。さすがに名前の復唱はしなかったようだ。言われても妙な感じしか受けないが。