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きっかけは十人十色
第26章 ニアミス
最寄り駅だよね?
ちょうど表通りにいるから、そっち行こうか?
―――

周囲をぐるりと見渡す。
あいにく、全部の席が埋まっていた。
店内で待ち合わせるのは難しそうだ。

うん、最寄り駅よ。
でも私がそっちの方に行くね。
15分後でいい?
―――

帰り道は表通りからの方がスムーズだから、こっちまで来て貰うとなると、櫂に余計な移動をさせることになる。

分かった。
じゃあ、15分後ね。
―――

そしたら、着く頃に電話鳴らすね。
―――

うん、
地下道の入り口あたりにいるから。
気をつけて来てね。
―――

思わず、「ふふっ」と声が出そうになる。
唇に弧を描いたまま、ショコラキャラメルをゆっくりと傾けた。

はーい。
あとでね。
―――

悠長にしていられないのに、顔の緩みがおさまらない。
一旦カップを置くと、両手でぎゅっと頬を押さえた。
飲み終わったら髪は一応整えて、リップを塗り直して……。
あ、カットした細かい髪の毛……小鼻の脇とか、目元とかに付いてないかしら。フェイスブラシで払って貰うから大丈夫だとは思うけ、ど。
――待って?今付いてたらかなり恥ずかしい!
手鏡を鞄からサッと取り出して、顔を左右に傾けて手早くチェックした。
……はぁ。セーフ。
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