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きっかけは十人十色
第27章 いたずらなタイミング
「気が済んだだろ。いい加減離れろ」
俗に言う、“ドスの利いた声”に当たるのだろう。自分でも驚くほど低くて太い声が出た。
ビクリと肩を震わせると、纏わりついていた腕と押しつけられていた胸はようやく離れた。
「何よ、そんな怖い顔しなくたっていいじゃない」
何が悔しいのか、下唇を噛んでいる。
「気を引いて反応を楽しみたいだけだろ」
「……」
やっぱり図星か。
「そんなんじゃ誰とも長続きしないからな」
「はっ、説教?私のこと放っといたくせに」
よく言うよ。
放っとかれた挙げ句に自分が取った行動、忘れたのか?
原因の一端は俺にあったとは言えど、それはしていい理由にはならないだろ。
「悪かったとは思ってるよ。でも謝らない」
「要らないわよ」
鼻を鳴らして腕を組むと、胸元の谷間が強調された。
他の男ならいいアングルだと鼻の下を伸ばす光景だ。でも。
「俺、もうお前に構う立場じゃないから。行っていい?て言うかもう行くから」
本来ならこうしてる時間も惜しいくらいだ。
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