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きっかけは十人十色
第27章 いたずらなタイミング
地下通路を抜けると、大通りに出た。
膝に手をついて、肩を大きく上下させて息をする。
辺りをぐるりと見回して、車が行き交う隙間を凝視して向こうの通りにも目を向けるも、姿は見当たらない。
家に行くとしたら、最短ルートはこの広い道を通って……。

――広い、道?いや、違う。
人通りが多い中、涙に濡れた顔は見られたくないはずだ。
人目を避けるならば出会う確率の低い、狭い路地を選ぶのが人間の心理というもの。
あぁ、何でこう頭が回らないんだ。すぐに気付けよ、俺。
焦りと連動して、額から汗が流れ出る。
打たれた頬に汗がピリッと沁みた。
爪が当たったのか。
こんなの、詩乃が受けた心の傷に比べたらわけないよ。
腕で汗を拭うと、バラの香りが鼻孔を掠めていった。
こんなところにまで嫌悪感が残るのかと、ため息が出そうになる。
いや、ため息なんかついている場合じゃない。
考えろ、考えろ。
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