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きっかけは十人十色
第27章 いたずらなタイミング
――あ、そうだ。携帯……。
画面には不在着信の表示が残ったままになっている。
着信にはすぐ気付いていた。
『着く頃に電話鳴らすね』って言ってくれたから、連絡が来るのなんて分かりきってたことなのに。
出ようとしたタイミングで名前を呼ばれて、そっちに反応してしまった。
無視すればよかったんだ。
そうすれば泣かせることなんてなかった。
いや、違うか。
いろんなところで判断を間違えた。
ごめんね。
謝ったところで遅いのかも知れないけど、叶うなら抱き締めたい。
ふふっとくすぐったそうに笑う柔らかい表情も、にっこり笑う綺麗な顔も、屈託のない笑顔も。
腕の中に閉じ込めて、離したくない。
もう一度、心地のいい声で名前を呼んで欲しい。
再び走り出しながら、望みをかけて詩乃の携帯を鳴らした。
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