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きっかけは十人十色
第28章 繋いだ手
「電話に出たら『今すぐ来て!』なんて叫ぶから何ごとかと思えば……。ひどい顔ねぇ」
呆れたようにため息を吐きながら、お母さんが隣に腰を下ろす。
私はソファの上で膝を抱えて座っていた。
手に持っているハンドタオルは、もうくしゃくしゃの状態。
「あら、髪綺麗になったじゃない」
「……ありがと」
素直に喜べなくてむくれた顔になったのは、櫂に一番に褒めて貰いたかったから。
また鼻の奥がツンとして、じわりと視界が滲む。
「あー……もう……」
人差し指が伸びてきて、涙をそっと拭い取られる。
「ちゃんと顔洗って、お化粧落としてらっしゃい。少しはスッキリするから」
促されて、「はーい……」と力なく返事をすると、洗面台へ向かった。
前髪をヘアクリップで留めて、鏡を見つめる。
確かにひどい顔。ファンデーションはいくつも縦じまのラインを作っているし、アイシャドウは滲んで、ウォータープルーフのマスカラも崩壊した涙腺に負けたみたいだ。
力任せに拭い取ったと思ったリップも拭いきれていなくて、口端にうっすらと残っている。
クレンジングオイルを手に取って、指先でくるくると円を描きながら手の甲からゆっくりと落としていった。
呆れたようにため息を吐きながら、お母さんが隣に腰を下ろす。
私はソファの上で膝を抱えて座っていた。
手に持っているハンドタオルは、もうくしゃくしゃの状態。
「あら、髪綺麗になったじゃない」
「……ありがと」
素直に喜べなくてむくれた顔になったのは、櫂に一番に褒めて貰いたかったから。
また鼻の奥がツンとして、じわりと視界が滲む。
「あー……もう……」
人差し指が伸びてきて、涙をそっと拭い取られる。
「ちゃんと顔洗って、お化粧落としてらっしゃい。少しはスッキリするから」
促されて、「はーい……」と力なく返事をすると、洗面台へ向かった。
前髪をヘアクリップで留めて、鏡を見つめる。
確かにひどい顔。ファンデーションはいくつも縦じまのラインを作っているし、アイシャドウは滲んで、ウォータープルーフのマスカラも崩壊した涙腺に負けたみたいだ。
力任せに拭い取ったと思ったリップも拭いきれていなくて、口端にうっすらと残っている。
クレンジングオイルを手に取って、指先でくるくると円を描きながら手の甲からゆっくりと落としていった。