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きっかけは十人十色
第28章 繋いだ手
やっぱり瞼は腫れて赤くなっている。
ま、いっか。
明日は日曜日だし、特になんの用事もないし、月曜日には腫れは引いて普通に出社できる。
化粧を落としきると、幼くなった自分の顔に向かって鏡越しにフッと笑った。

「お茶淹れるね。紅茶だけど」
リビングに戻るとすぐに声をかけた。
「あーら、珍しい」
「気分転換よ」
「そう?何だっていいけど。じゃあ、ありがたく待ってるわ」

お湯がシュンシュンと沸き始める頃、シンとしていた室内にチャイムの音が響いた。
反射的に、ティーポットに茶葉を入れかけていた手が止まる。
頼んだ荷物もないし、面倒な押し売りもたまにあるけど――……このタイミングで思い当たるのは一人だけ。
「お願い、出て」
「自分の家でしょう?家主が出なさいよ」
「……お化粧してないし、イヤ」
整わないのは心の中だけど。
「はいはい。もう、困った子だわ。ほんと、誰に似たのかしら」
ブツブツ言いながら玄関へと向かう後ろ姿を見ながら、お母さんでしょ。親子なんだから。と脳内でべーっと舌を出した。
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