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きっかけは十人十色
第28章 繋いだ手
「あら、柴崎さん。いらっしゃい」
予想通り、来訪者は櫂だった。
手元はなんとなく動かしながら、しっかりと聞き耳を立てる。
「どうぞ、上がって」
「……っ」
注ごうとして傾けていたティーポットとカップが触れて、カチャンと音を鳴らした。
待って、心の準備がまだなの。
「いえ、こちらで大丈夫です」
「そう?」
「はい」
櫂の落ち着き払った声が、逆に心をざわつかせる。
「じゃあ、詩乃呼んでくるわね」
「待って下さい」
「どうしたの?」
「すみません。詩乃さんのこと、泣かせてしまって」
違う、私が勝手に泣いたの。
「あー……、事情よく知らないのよね。たぶん、ケンカじゃなさそうだけど」
「はい」
「それにしても、相変わらずよく整った顔ねぇ。……あら、怪我してるじゃない」

えっ、怪我?
身体が勝手に動き出していた。

「どこっ!?」
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