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きっかけは十人十色
第28章 繋いだ手
「地下道出た辺りで着信貰ったから、出ようとしたら後ろから名前呼ばれて、そっちに反応しちゃって『偶然ね』って腕を取られて」
「腕、振り払おうと思えばすぐに振り払えたのに、取引先の関係者だから、何かあったら……って、保身に走った。『彼女と待ち合わせてるから離れろ』って何度言っても聞かなくて、押し問答になって、……判断、間違ってた」
「そういう経緯。泣かせてごめん。嫌な思いさせて、本当にごめん」
そう言って、櫂はゆっくりと頭を下げた。
「……櫂。顔、上げて。それから、目瞑って」
営業のお仕事をしている人は、顔は乃ち名刺代わり。
整った顔に傷をつけるのはイヤ。
でも、事情は呑み込めたとは言っても、全てを許せるほど私はいい子じゃない。
親指と中指を丸めると、少しだけ力を込めて櫂の額に近付けた。
「腕、振り払おうと思えばすぐに振り払えたのに、取引先の関係者だから、何かあったら……って、保身に走った。『彼女と待ち合わせてるから離れろ』って何度言っても聞かなくて、押し問答になって、……判断、間違ってた」
「そういう経緯。泣かせてごめん。嫌な思いさせて、本当にごめん」
そう言って、櫂はゆっくりと頭を下げた。
「……櫂。顔、上げて。それから、目瞑って」
営業のお仕事をしている人は、顔は乃ち名刺代わり。
整った顔に傷をつけるのはイヤ。
でも、事情は呑み込めたとは言っても、全てを許せるほど私はいい子じゃない。
親指と中指を丸めると、少しだけ力を込めて櫂の額に近付けた。