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きっかけは十人十色
第8章 帰り道
「キ、キス…は構わないんだけど、その先のことなんですが」
―何を言うのかと思えば。
「櫂はすぐシたい?」
もし飲み物を飲んでいたら噴き出すくらいの衝撃を受けた。
ぼかしたかと思いきや、言葉のチョイスが直接的過ぎる。
「そりゃ、まぁ…。でも、お互いの気持ちがあってのことだから無理やりには考えてないし、したくないし。徐々にで良いんじゃないかな」
「私…その、しばらくご無沙汰状態だったから、すぐはちょっとな、って思ってたの」
あぁ。そういうことか。
「でも、世の中にはそういう店があるじゃない」
「木山さんは俺がそういう店に行っても平気なんだ?」
少し意地の悪い質問を投げかけた。
「う…、嫌かも。じゃなくて嫌」
「俺ら、27歳でしょ。その年だからって訳じゃないけど、ちゃんと我慢できるし、その辺の分別はするよ」
「…良かった。ありがとう」
ちらりと木山さんの横顔を見ると、口元が嬉しそうに綻んでいた。
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