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きっかけは十人十色
第11章 3年半前の記憶
『…分かった。帰るから。さよなら』
ドアを開けるところで、ハッと気がついて目が覚めた。
当時、自分でも驚くほど抑揚のない声で宗輔の部屋を出たのを覚えている。
別れた日のことを夢に見るなんて、今日偶然会ってしまったせいだ。
終始上から目線で、別れ話をされた時の感情が一瞬にして蘇ってきた。睨みつけた後も怒りが収まらなくて、そんな気持ちのまま櫂と一緒の時間を過ごしたくなくて。
楽しい時間を楽しいまま終わらせたかった。
―そっか。そのまま伝えればいいのか。拙くても…分かってくれるかしら。
思わずスマホを手に取って、通話履歴画面を出した。
通話ボタンに指先が触れる直前で、動きを一旦止めて考えを仕切り直した。
電話で全て話すのはだめだ。電話で済ませてはいけない気がした。
それか、勤め先は分かってるから会社で待ち伏せる、とか?帰る所をつかまえて―…。いやいや、おかしいでしょ。第一、都合よく会えるとは限らない。
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