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きっかけは十人十色
第12章 偶然の後押し
今日はいつもより帰りが遅くなってしまった。改札を出ようと鞄の中の定期を探ったものの、定位置にない。
あれ、別のポケットに入れたっけ?と探りながら歩いていたら、前を歩いていた人との距離感が狂ってしまい、ぶつかってしまった。
「すみません、私の不注意で…」
慌てて頭を下げる。
「いえ、こちらこそ。お怪我は?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
紳士的な対応にほっと胸を撫で下ろして、顔を上げて言葉を返した。
あれ?どこかで見た顔…。
相手の人も同じことを思ったのか、少し顔を傾けてじっと私の顔を見つめている。
「…あ!柴崎の…彼女さん?」
お使いを頼まれて樋渡商事に書類を持って行った時に、エントランスで会った人だ。櫂の隣にいた人。そうだ、思い出した。
頷いて、軽く会釈を返した。
「ちょっと時間大丈夫かな」
「はい」
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