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きっかけは十人十色
第16章 油断は禁物
「大した理由なんてないですよ」
サラリとそう言って、コーヒーを喉元に流し込んだ。
大したことはしたけれど、ばか正直に話す内容ではない。
「ふーん?」
と含みのある視線を向けられた。
明らかに探りを入れている目だ。
「私、柴崎くんのプライベートあんまり知らないのよね」
右に同じく。違うのは関心の濃さだ。
「あー…。聞いても面白くないと思いますけど」
「そこを判断するのは私じゃない?」
「まぁ、そうですね」
「どう?今度二人で飲みに行かない?」
のらりくらりとかわすのも楽じゃないな。さて、何と言おうか。角が立っても困りものなのだが。
「うーん、飲むなら大勢の方が楽しくないですか」
一瞬だけ目を丸くして、肩を竦められた。
「…分かった。柴崎くん顔は良いのに容赦ないのね」
褒められてるのかけなされているのかは分からないが、取りあえず意図は伝わったらしい。
返す言葉が見つからず、ペコリと頭だけ下げた。
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