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きっかけは十人十色
第20章 適度な距離感
「うん。分かった」
『あんまり話してると会いたくなるね。俺は会っても構わないんだけど』
「ううん。もったいないから気持ちだけ受け取っておくわ」
『そっか、残念』
ひとりでに笑みが深くなっていく。
「櫂」
『うん?』
「ありがとう」
思った気持ちがそのままストレートに出てきた。
『……俺もう、これ以上話してると我慢できなそう』
「え?何?」
吐く息の音でザザっとかき消されて、うまく聞き取れない。
『詩乃、お風呂入った?』
「あ、これから……」
『入っておいでよ』
「うん。じゃあ……またね」
『はーい。じゃあね』
そのまますぐに通話は切れた。
あ、櫂におやすみなさいって言い損ねちゃった。スマホを眺めながら先ほどまでの会話を思い返す。
声のやり取りだけで愛しくなったり、表情を思い浮かべたり、くすぐったくも想いが溢れる時間だった。
そう言えば、さっき何て言ったのかしら。
顎に人指し指を当てて首を傾げるも、分からない。
「ま、いっか」とひとりごとを言って、「明日も仕事頑張ってね」とスマホに向かって届くように願いを込めた。
『あんまり話してると会いたくなるね。俺は会っても構わないんだけど』
「ううん。もったいないから気持ちだけ受け取っておくわ」
『そっか、残念』
ひとりでに笑みが深くなっていく。
「櫂」
『うん?』
「ありがとう」
思った気持ちがそのままストレートに出てきた。
『……俺もう、これ以上話してると我慢できなそう』
「え?何?」
吐く息の音でザザっとかき消されて、うまく聞き取れない。
『詩乃、お風呂入った?』
「あ、これから……」
『入っておいでよ』
「うん。じゃあ……またね」
『はーい。じゃあね』
そのまますぐに通話は切れた。
あ、櫂におやすみなさいって言い損ねちゃった。スマホを眺めながら先ほどまでの会話を思い返す。
声のやり取りだけで愛しくなったり、表情を思い浮かべたり、くすぐったくも想いが溢れる時間だった。
そう言えば、さっき何て言ったのかしら。
顎に人指し指を当てて首を傾げるも、分からない。
「ま、いっか」とひとりごとを言って、「明日も仕事頑張ってね」とスマホに向かって届くように願いを込めた。