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きっかけは十人十色
第21章 市場調査
「もしもし?」
『ごめんね、急にかけちゃって』
「ううん、全然いいんだけど」
声が眠そうだ。
すごくゆっくりと、とろんとした声に聞こえる。少し低めに感じるのは、布団の中で寝転んだ状態で話しているからだろう。
それはそれで、想像するだけで可愛らしいのだが。
やっぱり起こしてしまったんだろうな、と頭の片隅に申し訳なさが残る。
『あのね。おやすみって、直接言いたかっただけなの』
思わず携帯が手から落ちそうになって、握り直した。
『だから、また、明日。ね……』
少しずつ声がフェードアウトしていった。

しばらくシーンとしていたが、耳を澄ませて受話器の音を拾うと、遠くから微かに寝息が聞こえる。完全に夢の世界に行ってしまったようだ。

「おやすみ、詩乃」

緩む口元をこらえ、囁くように伝えると、そっと通話を切って俺自身もベッドに移動した。
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