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第22章 嵐の前触れ

「悪いけど頼むわ」
顔の前に手を立てて、“ゴメン”のポーズをすると、再びキーボードを叩き始めた。
「はい、頼まれました」
「調子乗んな。いつもは承知しましたって言うくせに」
すぐに横から声が飛んできたが、先輩の口調は穏やかだ。
「すみません」
すぐに頭は下げたが。


渋井工業への訪問を済ませて、余裕を持って篠田興産に到着した。
応接室に通されて、しばらくすると部長の平田さんが入ってきた。
「いや申し訳ない、お待たせしました」
恰幅が良くて、人当たりの良い方だ。
立ち上がってお辞儀をして、挨拶をする。
「こちらこそお時間取って頂いてありがとうございます。田嶋が来る予定だったのですが、所用で外すことになり大変申し訳ありません。私が代わりに参りました」
「はい、連絡頂いて承知してますよ。まぁ、堅苦しい挨拶はこのくらいにしておきましょう。どうぞお掛け下さい」
スッと、茶色の革張りのソファを示された。