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きっかけは十人十色
第22章 嵐の前触れ
軽く頭を下げて、ソファに腰を下ろす。
直後、コンコンコン、と小気味良いノックの音と共に、緑茶の薫りが室内に入ってきた。
「失礼致します」
何となく聞き覚えのあった声に、封筒から書類を取り出しかけていた手を止めて、顔を上げてしまった。
あ、と口が小さく開いて、思わず立ち上がりかけてしまう。
浮いた腰を無理矢理下ろすと、沈んだ反動でテーブルの下に膝をガッとぶつけてしまった。地味に痛い。
「申し訳ありません、失礼致しました」
ぶつけたのは何でもなかったようにして、すぐに頭を下げた。
「いえいえ、お気になさらず。お知り合いでしたか?」
「えぇ、まぁ」
詳しくは語らず、にっこりと営業用の笑顔を返した。
何か感づかれたかもしれないが、野暮なことは訊かれないだろう。
向こうはといえば眉一つ動かさない。
音を立てないように丁寧にお茶をテーブルの上に置き終わると、
「失礼致しました」
と折り目正しくお辞儀をして応接室を出ていった。
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