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恍惚なる治療[改訂版]
第9章 都合のいい存在

「Aさんが女性を愛せる、だから離れた…の前に、佐伯先生がAさんの事をどう思ってるのか、そちらの方が大事なんじゃないですか?元恋人と話してるのを見て、モヤモヤしたのは嫉妬です。何でもない関係なのに嫉妬するなら、Aさんが好きって事なんだと思いますよ」
「すき…?」

俺が柳川さんの事を好き?

「それは、友達とし…」
「違います!1人の人間として、恋人として好きって事です」
「いやいや、何言ってるの?俺男だよ?Aさんは男…いや、違う、これは友達の話で…」

「友達の話じゃ無いのはとっくに分かってます!誰かを好きになるのに性別は関係無いですよ。男だとかそんなの凝り固まった思考を持ってるのは、昔の男女間の恋愛観の持ち主だけです。前にも言いましたけど、今時同性同士の恋愛なんて珍しくないんですよ。男だからって理由だけでAさんからの好意から逃げないで下さい。きちんと向き合ってあげて下さい」

三雲さんの言葉はもっともだ。
俺はラインもまともに返さない程、柳川さんから逃げている。
好きという以前の、柳川さんからの好意から…

「…Aさんは自分の欲望を満たす為に俺に好意を振りまいていたって気付いたらどうする…?俺はそれが1番ショックだった…」
「それも含めて話し合った方が良いですよ。私はAさんの事を何も知らないから何も言えないけど、先生のお友達なら、下らない理由で佐伯先生に近づいたわけじゃないと思いますよ」




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