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恍惚なる治療[改訂版]
第11章 晩夏の甘い思い出

「僕は小サイズで良かったのに、中サイズを買ったんですね…」
「いや、俺もベビーカステラ好きだから、沢山食べたくて…」
「ふふっ、可愛い…」

翌朝、冷めて柔らかくなったベビーカステラをトースターで温めて、柳川さんと一緒に摘む。

「美味いな…」

昔父親と一緒に祭りに行って買ってもらったものと同じ味がした…

「父親と祭りに行った時、いつもベビーカステラを買ってもらってたんですよ。懐かしいなぁ…」
「佐伯さんのお父様はどんな方だったんですか?」
「優しくて、頼り甲斐のある人でした…」
「佐伯さんみたいな方だったんですね」

俺みたいではないけど、今でも尊敬している立派な人だ…

「佐伯さんの浴衣姿が似合い過ぎて、まともに祭りを楽しめなかったのが心残りです…」
「俺のせいですか…」
「そうじゃ無くて、僕の気持ちの問題です…」
「だったら、また行きましょう。柳川さんの浴衣も用意しますから、来年また行きませんか?」

俺の発言に柳川さんは一瞬惚けた顔をして、その後泣きそうな、嬉しそうな表情となった…

「…俺変な事言いましたか?」
「いえ、ありがとうございます…」



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