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恍惚なる治療[改訂版]
第12章 熱に浮かされて

「佐伯さん大丈夫ですか?風邪ですか?」
「えっと…」
「風邪は引き始めの対処が大事です。今日は仕事をせずにゆっくり休んで下さい」
「えー…」

不満そうな佐伯さんの背中を押して、ベッドに座らせた。

「来週締め切りのもう1つの短編の執筆を進めておきたかったんだけどなぁ…」
「佐伯さんはここ数日仕事漬けでちゃんと休まれてないんでしょう。今休んでおかないと明日になって悪化する危険性がありますよ」

佐伯さんをベッドに寝かせて、布団を被せる。
色々買い出しに行った方が良いかと考えていると…


「あの、柳川さん、俺もう大丈夫なんで…柳川さんに移すわけにもいかないのでそろそろ…」

やんわりと帰るよう促され、ハッとした。
流石に世話を焼きすぎたか…
付き合い始めとは言え、ここまでされるのは迷惑だったか…

「すみません、やり過ぎました…」
「いえ、柳川さんも明日仕事でしょ?家でゆっくりして下さい。時間を割いてしまって申し訳ないです」
「そんな…」

僕にとって佐伯さんと過ごす時間が1番の癒しの時間なのに…
この人は分かってないな…

「今日はもう仕事しませんか?」
「しません」
「分かりました。今日は帰りますその代わり体調が悪くなったらすぐに連絡して下さい」
「はい、ありがとうございました…」

額にキスをして、佐伯さんの家を後にして、電車に乗ったところで気が付いた。

しまった、風邪薬があるか確認するの忘れてた…




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