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恍惚なる治療[改訂版]
第12章 熱に浮かされて

翌日、いつも通り出勤し、診察室で予定の入っている患者さんのカルテを確認していると、看護師の宇佐美さんがコーヒーを差し出してくれた。

「ありがとうございます」
「いえー。それより柳川先生、例の方とはどうなりました?」
「例の方?」
「ほら、この前『気になる人と行けるお洒落なお店を探している』って言ってたその人!」
「ああ…」

宇佐美さんには以前お店を紹介してもらった際に「気になる人が居る」と話した事があった。

「お陰様で何とか付き合ってもらってます」
「ホントですか!?おめでとうございます!」
「でもすみません、宇佐美さんに紹介してもらったお店にはまだ行けてないんですよね。彼…いや、その人の仕事が落ち着いたら一緒に行こうと思います」
「ぜひぜひ!コース料理がとっても美味しいので、堪能して下さいね」

宇佐美さんは僕の恋人に興味津々な様子だ。

「柳川先生の恋人ってどんな方なんですか?」
「うーん…優しくて、仕事の出来る方ですね。余り甘えるのが上手く無いので甘やかしたくなるタイプです。昨日も仕事漬けで疲れてるみたいだったので、昼食を作ってあげたら喜んでくれましたね」
「柳川先生って《《彼女》》さんに尽くすタイプなんですね。意外!」

尽くすタイプか…
こんなに尽くすのは佐伯さんが初めてだけどね…

それにしても、彼女ね…
恋人が男性だと知ったら、彼女はどう思うかな?




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