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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷

「佐伯先生、夜遅くに申し訳ありません」
「いえ」

とある日の夜、担当の田宮さんに「大事な話」があるとバーへと連れられて来た。
カウンターに座ってカクテルを注文すると、田宮さんが口を開いた。

「実は『浅間 藤治』にドラマ化の話が来てまして…」
「ドラマ…えっ!?本当ですか!?」
「はい」

まさか『浅間』にドラマ化の話が来るなんて…
イマイチ実感が湧かない…

「詳しい話は佐伯先生のドラマ化の許可を得てから進んでいくのですが…どうされますか?」
「どうって…」

ドラマ化するかどうかの話…
有り難い話ではあるが、即決出来る話では無い…

「この場で判断する話では無いので、許可を出されるかどうか熟考なさって下さい。ただ、これだけは知っておいて下さい…ドラマ化の話が来たのは、佐伯先生の作品が多くの方に読まれて支持されている証なのだという事を」
「はい…」

評価されていると田宮さんは推してくれたが、自信が無い…
ドラマ化して観てくれる人が居るのか、批判的な意見が多かったらどうしようか…

下らない感情で許可を出せない自分が腹立たしい…



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