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恍惚なる治療[改訂版]
第14章 古傷
「今日はすみませんでした。決められなくて…」
「いえ、断る事も可能ですので、考えて答えを出して下さい…アレ?あの人…」
店から出て、駅に向かう途中で道端で蹲る女性が居て、田宮さんは心配そうに傍に寄って女性の背中を摩る。
「大丈夫ですか?」
「すみません…飲み過ぎて気持ち悪くなって…」
「立てますか?佐伯先生すみません、そこの自販機でお水を買っていただけませんか?」
「はい」
颯爽と女性を介抱する田宮さんに感心してしまう。
女性に触れない俺には無理だ…
自販機でミネラルウォーターを購入し、2人の近くに行くと、田宮さんは女性を支えて立ち上がった。
「……!!」
女性の顔を見て、思わず息が止まりそうになった。
あの人と顔がそっくりだったから…
「は、はっ…」
あの時の記憶が蘇りそうになり、腹の奥から不快感が湧き上がる。
「うう…」
「佐伯先生…?」
違う、この女性はあの人じゃない…
口元を手で押さえ、吐きそうになるのを我慢する。
無理矢理記憶に蓋をする…